東京地方裁判所 昭和29年(ワ)3297号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事実〕原告はその所有に属する本件宅地四二坪八合を被告長山に賃貸し、被告長山は右地上に(イ)(ロ)(ハ)三棟の家屋を建築所有していたが、その後被告長山から被告新倉に(ロ)の建物(建坪六坪二合五勺の平家建居宅一棟)が譲渡された、原告は、右譲渡は原告に無断でされたものであり、従つて右(ロ)の建物敷地についても賃借権の無断譲渡または無断転貸ありとして、民法六一二条により賃貸地全部について契約解除の意思表示をした。被告長山は、右建物譲渡につき原告の承諾ありと主張し、地上建物の売買について承諾を与えた地主は、その敷地の使用関係の移転についても当然承諾を与えたとみるべきである、と争う。判決は、右建物譲渡は原告の承諾を得ずにされたものであり、その敷地は被告長山が被告新倉に無断転貸したものであると認定したうえで、次のとおり判示した。
〔判断〕右認定のとおりとすれば、原告より被告長山に対する前記賃貸借契約解除の意思表示は、無断転貸を理由とするものとして一応適法ということができる。
しかしながら、ひるがえつて考てみるに、右無断転貸にかかる建物敷地は六坪二合五勺で、本件四二坪八合の土地の僅少部分に過ぎず、しかも被告長山本人尋問の結果によれば、同被告は右契約解除後原告において賃料受領を拒絶するに至るまでは右六坪二合五勺の部分についても遅滞なく賃料を支払つて来ており、また本件四二坪八合の土地全部をその地上建物を収去して明渡すにおいては、一朝にして収入の途を失い、路頭に迷うに至るべきことが認められる。もつとも賃貸地の一部に対する無断転貸といえども、原則として賃貸地全部に対する地主の賃貸借契約解除を妨げないが、少くとも前記の如き事情の下にあつては、賃貸地全部に対する地主の契約解除を肯認することは、権利の濫用として許されない。だが一面無断転貸はあくまでも許容せらるべき行為ではないから、本件の場合にあつては彼此斟酌して、契約解除の効果を右無断転貸地の限度に止めるのを妥当とする。
右説示のとおりとすれば、本件四二坪八合の土地中前記(ロ)の建物敷地六坪二合五勺の部分に限り、昭和二八年一〇月二四日を以て賃貸借契約が終了したこととなるから……。